« 音楽鑑賞編⑥ ~今年はまったアーティスト~ | トップページ | 映画鑑賞編⑤ ~2017年の総括~ »

2017年12月22日 (金)

読書編③ ~村上春樹とカズオ・イシグロの比較~

今年も村上春樹はノーベル文学賞をとれませんでした。
ハルキストが6次元で残念がる姿は、もはや秋の風物詩となっている。

受賞したのはカズオ・イシグロ氏。
zouは以前から、両者の作品をよく読んでいたので、ほぉそうかとなかなか感慨深い。
そこで今回は、村上春樹とカズオ・イシグロを比較してみる。

村上 春樹(むらかみ はるき)・・・1949年1月12日生、京都府京都市出身、兵庫県西宮市育ち。
カズオ・イシグロ(石黒 一雄)・・・1954年11月8日生、長崎県出身の日系イギリス人。

まず比較する前に、重要な問題として、基本的に日本語で書かれた文章と英語で書かれた文章を和訳したものとを比較できるのか、ということである。和訳する人の技量がその文章の善し悪しを左右するのは間違いない。ノーベル文学賞の審査員で英語(ノーベル賞だからまさかスエーデン語?)以外の母国語で書かれたものを読んで審査している人ははたして何人いるのか。日本語のもつ微妙なニュアンス、例えば「僕」なのか「ボク」なのか「俺」なのか「私」なのか、それだけでも読み手の受ける印象は違う。それで言うと、村上春樹の小説を村上本人が英訳しない限り、村上がノーベル文学賞を獲れるか獲れないかは翻訳家の技量にかかっているといっても良いだろう。

翻訳といえば、村上春樹は、海外作品を彼が翻訳(和訳)している小説もいくつか出している。フィッツジェラルドの「グレートギャッツビー」やレイモンドカーヴァーの傑作選など村上自身が好きな作品を村上流で和訳している。たしかにそのテイストは出ており、いかにも村上春樹らしく、本人が書いたものと言っても通用するのではと思う。村上春樹ファンならとっくに読んでいるだろうが、もしまだ未読なら読んでみて損はないだろう。




本論からはズレてしまったが、そうは言いながら良い文章はどの言語に翻訳されようと良いものだ、とくくってしまわないと比較論が進まないため、翻訳如何は考慮しないこととする。
まず両者の作品数を比較すると、村上春樹はざっと調べたところ、長編14編、短編集13編、随筆・紀行文32編、その他翻訳・絵本・対談集等多数など。一方のカズオ・イシグロは、長編7編、短編集5編と村上に比べ圧倒的に寡作と言えよう。
この作品数でノーベル文学賞獲れるの?という気がするが、ここ最近の過去のノーベル文学賞受賞者の作品数をウィペディアで調べてみると、パトリック・モディアノ34編、アリス・マンロー18編、莫言21編程度だが、これは漏れが相当数あると思われる。カズオ・イシグロの長編小説はどれも300ページ程度であり、それを考えると他と比較しても寡作であるのは間違いない。

さて、内容の方だが、文章自体は好みだろうが、ストーリー展開はやはり村上春樹に軍配か。現実感としては、「わたしを離さないで」は別として、カズオ・イシグロの方が実際にありそう、起こりそうな話が多く、心静かに安心して読める。読み手のターゲットは、村上は”若者から中年まで”がいいところかと思うが、カズオ・イシグロは”大人向け”な印象。逆に言うと、村上は大人には若干ちゃらいが、カズオ・イシグロは若者には確実にうけない。

どちらも主だった作品をほぼ読んだ感想として、村上春樹はどの作品もそれなりに面白く、高いレベルにあると言える。他方、カズオ・イシグロの「日の名残り」は人生で何冊と出会えないであろうレベルの作品。その上で、zouがおすすめ作品は以下のとおりだ。

zou的村上春樹作品ベスト3
第3位 風の歌を聴け




第2位 羊をめぐる冒険




第1位 世界の終わりとハードボイルドワンダーランド




どうしても初期の作品が多くなってしまうが、独特の文体とその世界観に衝撃を受けた。著者も若かったせいか、若者の不安定さがよく表されている。若い方は特にぜひこのあたりの作品を読んでみるべきだ。


zou的カズオ・イシグロ作品ベスト
第1位 日の名残り



もうこれは断トツの1位であり、さきほども書いたが、人生においてもめったに出会えないほどの名作。絶対に読むべし。ノーベル文学賞は個別の作品に対して贈られるものではないという前提には立っているが、明らかにこの本に対する賞と考えて良いだろう。ファンには申し訳ないが、これ以外の作品は「わたしを離さないで」も含めて特筆すべきものはない。

« 音楽鑑賞編⑥ ~今年はまったアーティスト~ | トップページ | 映画鑑賞編⑤ ~2017年の総括~ »